機関紙「まちと交通」74号 を発行しました

特集「事故オープンデータの利活用に向けた地理情報システムにおける可視化手法に関する検討」

(1)事故原票データのオープン化
皆様は事故原票データのことをご存じでしょうか。事故原票データとは、交通事故が発生した時に、警察が事故現場で事故の原因について、関与者に対する聞き取りの結果を記録するとともに、交通事故の発生時間、発生箇所、関与者の運転車種等に関する情報を収集したものです。交通事故対策を検討するため、事故原票データに基づいた分析は有用です。近年、交通事故件数の低減に向けた取組の一環として、警察庁は平成31年における日本全国の事故原票データをオープンしています(警察庁、2020)。また、事故原票データのオープン化が進められており、一部の都道府県は既に交通事故の原票データをオープン化しています。これによって、交通事故の多発箇所や関与者特性(年齢層・運転車種等)を考慮した事故特性への分析は可能となります。

(2)事故原票データの活用に関する当研究所の取組
当研究所は長期間にわたって、豊田市役所地域振興部交通安全防犯課を通じて、愛知県警から豊田市内で発生した交通事故の原票データを頂戴し、委託業務内容として、小学校区別の交通事故マップの作成や「とよたの交通事故」冊子の編集に活用しています。また、このような貴重なデータをさらに活用することを念頭に置き、ゾーン30(30キロ速度規制が設定された区域)整備エリアの選定方法、非高齢者と比較した高齢者の事故特性分析に関する自主研究を進めてきました。その成果は、国内外の学会にて論文発表(例えば、交通工学研究会研究発表会、米国交通運輸調査研究会の年次大会(以下、TRB年次大会と称する))やジャーナルにて査読付論文の公表(例えば、Asian Transport Studies、Journal of Advanced Transportation)ができるようになりました。また、既に公開された福岡県の事故原票データを活用し、運転車種を考慮した交通事故による負傷程度分析に関する研究をTRB年次大会にて査読付研究論文の発表を行いました(Yang et al., 2020)。

(3)本研究の問題意識及び目的
上記のTRB年次大会にて発表した2編の論文は筆者が主担当した自主研究による成果ですが、交通事故分析に関わる研究者を対象とした学術的な研究成果であり、やや分かりにくいかもしれません。しかし、事故原票データのオープン化が進められている中、このような貴重なデータを活用していき、交通事故のさらなる削減を目指していかねばいけないと考えています。そこで、本稿では、当研究所の既存研究による成果を整理しながら、オープン化した事故原票データの利活用を検討することを目的としています。特に、事故原票データから把握できる位置情報の活用方法について着眼しています。

機関紙「まちと交通」74号